2020 年 76 巻 2 号 p. I_703-I_708
水害前後の不動産価格変化を分析し社会の水害危険性認識を考察する研究が行われ,水害多発地域では,新たな被災が価格に与える影響は小さく,危険性の高い地域は常に安く評価されることが確認されている.ただし,価格下落と相関を有する危険度情報は,治水性能の向上などに伴い変化してきたことが指摘されている.近年の水害危険度情報への社会的関心の高まりを踏まえると,水害想定の影響が大きくなっていると予想される.そこで,本研究は水害多発地域の一つである名古屋市を対象に,地価と水害危険性情報の関係を分析した.平常時から危険区域は安く,水害後変化しないという既往研究の結果を再確認すると共に,近年は被害区域よりも浸水想定区域が価格に与える影響が大きいこと,また想定区域内では被害経験が無い方が減価が大きいことを確認した.