2021 年 77 巻 2 号 p. I_103-I_108
阿武隈川上流にある浜尾遊水地(福島県須賀川市)を対象に,令和元年台風19号出水における洪水調節効果を検証した.本洪水では遊水地周辺で氾濫が生じ,また上流の観測施設が欠測であったため流量が不明であった.そこで入手できたデータを組み合わせ,遊水地および氾濫原を含む領域で氾濫数値シミュレーションを反復して洪水を再現したところ,各種の断片的水位記録,痕跡水位および須賀川観測所データと概ね矛盾ない結果が得られた.それによれば,浜尾遊水地は増水期にほぼ満杯状態になり,洪水ピーク低減にほとんど寄与していなかった.一方,遊水地上流で溢水した洪水が氾濫原を低水深でゆっくり流下し,洪水ピークをカットしていたことが明らかになった.以上の結果は,今後の流域治水における超過洪水対策の参考になると考えられた.