2021 年 77 巻 2 号 p. I_127-I_132
河川堤防の強化工法の1つに矢板の設置が挙げられるが,現状その効果については不明な点が多く残っている.そこで,本研究では矢板設置時のパイピング破壊のメカニズム把握のため,簡易小型模型実験と浸透流解析を実施した.その結果,模型実験では矢板の設置により堤内地の噴砂の発生自体を抑えることは難しいものの,漏水流量を半減させるなど基礎地盤の変状が抑えられ,パイピング孔貫通を遅延させる効果があることが分かった.また,堤体下のパイピング孔の進展を模擬した浸透流解析から,堤外側からパイピング孔先端に向けて流速の大きな浸透流が直接作用することがパイピング孔貫通による破堤のトリガーの1つであることが明らかになり,矢板の設置によりこの作用を防ぐ効果があることが分かった.