2021 年 77 巻 2 号 p. I_181-I_186
本研究では佐用川流域を対象として複数の流出モデルを構築し,アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を用いて降雨および流量の将来変化の分析を行った.まず,分布型降雨流出氾濫モデルと貯留関数法モデルにより,既往最大の平成21年台風9号時の佐用川流域円光寺地点における流量を再現した.次にDual-Window法により補正されたd4PDFデータを用いて,年最大24時間雨量‐再現レベル図を描き,各再現期間に対する確率降水量を求めた.その後,年最大24時間降雨をもたらした各年の降雨量時系列を佐用川流域の2つの流出モデルに入力し,各降雨に対する流量ハイドログラフを求めた.結果として,再現期間ごとのピーク流量値が二つの流出モデルで異なること,貯留関数法による流量ハイドログラフの方が緩やかな曲線を示し,他方,分布型流出・氾濫モデルによる流量は降雨の局所的変動に対して鋭敏な応答を示すことなどが見て取れた.