2021 年 77 巻 2 号 p. I_241-I_246
自然湖や人工貯水池からの蒸発は人間活動を支える水資源の損失であり,またこれは湖沼内の熱動態に加えて河川流出入に伴う水面面積の変化などにも影響される現象である.本研究では河川・湖沼の水熱動態結合モデルフレームワークTCHOIRによってその全球推計を行った.これまでの研究において貯水池建設は水面面積の増加によって蒸発損失を増加させると指摘されてきたが,本研究では更に水面温度の上昇による単位面積当たりの蒸発量増加も生じることが分かった.また水貯留量の推計結果によれば流域スケールにおける滞留の多くは湖沼において生じており,水質分野においては河川による水平輸送と共に湖沼における水動態の考慮が重要である.これらの結果は,水資源や水質の推計において水熱動態や河川と湖沼の相互作用の考慮が不可欠であることを示唆している.