2021 年 77 巻 2 号 p. I_289-I_294
気象データの精度は適切に水循環を再現するために重要である.本研究は全球水資源モデルH08を用いて日本全域を対象とした河川流量シミュレーションを実施し,全球再解析気象データ,地上雨量計データ,レーダー雨量と地上雨量計から作成した降水量データを入力に与えた3種類の実験の河川流量の再現性を比較した.いずれの実験も北日本の河川は春季の流量を過小評価する傾向であるが,全球再解析データを用いた実験と比べると他の2実験は河川流量の再現性が向上した.地上雨量計のみを用いた実験とレーダー雨量も用いた実験の比較では,河川流量の再現精度は同程度であった.ただし,天竜川中流域のように地上雨量の観測網が不十分な山地では,レーダーによる降水量データを活用することで,河川流量の再現性が向上することが期待される.