2021 年 77 巻 2 号 p. I_49-I_54
全国一級水系で構築した分布型降雨流出モデルとd4PDFから得られる年最大降水量を用いて59一級水系でダムがある場合とない場合の降雨流出計算を行い,ダムの治水効果の全国的な将来変化を分析した.基準地点の洪水ピーク流量の比率(ダムあり/ダムなし)は一定規模以上の洪水で増加する水系と増加しない水系があることがわかった.前者は降雨規模が大きく貯水容量が小さい九州や太平洋側,後者は瀬戸内海や日本海側に分布した.計画規模に相当する洪水強度は4度上昇シナリオのもとで全国的に増大し,両者の違いは現在の治水容量によって決まることがわかった.また,4度上昇シナリオ下での異常洪水時防災操作に入る回数も治水容量によって決まることがわかった.