2021 年 77 巻 2 号 p. I_541-I_546
魚類は河川生態系における主要な分類群のひとつであり,河川環境や河川生態系の健全性の指標として用いられることから,魚類の分布や多様性の情報は自然環境の健全性を考慮した河川管理における重要な知見となり得る.そこで本研究では,近年開発された環境DNA定量メタバーコディングを用いて,山口県佐波川における各魚類のDNA濃度の日周変動について定量的に評価した.その結果,検出される種数およびDNA濃度は,時間経過ではほとんど変化しなかった.このことから,環境DNAメタバーコーディングを用いて魚類相を評価する際には,昼間にサンプリングするだけで生息するすべての魚類の情報を得られることが示唆された.また,一部の魚類については昼夜間で環境DNA濃度の変化がみられたことから,環境DNA分析によって行動活性の変化等を含む魚類の日周変動を捉えられる可能性が示された.