2022 年 78 巻 2 号 p. I_25-I_30
外水位の上昇によって水門が閉鎖され、堤内地の降雨が排水されなくなることで生じる湛水型内水氾濫の被害を評価する手法を構築し、東京都世田谷区の下野毛排水樋管を対象に分析を行った。気候変動により雨量が1.13倍〜1.15倍に増加した場合、床上浸水面積は1.22倍〜1.27倍に拡大することが判明した。複数の降雨パターンを代入して比較すると、今世紀末には1/200規模の降雨時に、最大で2.9mの浸水が発生した。現在の1/100および1/150の降雨による被害は、今世紀末には1/50まで高頻度化することも明らかになった。さらに、水門の閉鎖が長期化することで、社会的な影響が一層深刻になることが示された。