2022 年 78 巻 2 号 p. I_529-I_534
気候変動によって氷河の融解が進み,融解量推定及びその自然災害や水資源への影響評価は重要な課題となっている.モデル計算で氷河を扱うにあたり,氷河の融解速度に影響を与えるデブリ(表面を覆う岩屑等)は無視できない要素であるが,その分布や熱特性のデータを取得することが難しく,広域を対象とした解析は行われていなかった.本研究では衛星観測データを用いた手法を適用し,デブリ被覆分布の推定と熱抵抗値計算の広域展開を試みた.全球の氷河を対象としたデブリ被覆分布推定では,4.8%がデブリで覆われており,デブリ被覆率は地域によって差があることを示した.アジアの熱抵抗値分布からは融解速度に影響を与えるデブリが多いことが確認され,融解量推定においてデブリの影響を考慮することの重要性が示唆される結果となった.