2022 年 78 巻 2 号 p. I_751-I_756
既存の詳細な雨水流動モデルとキネマティックウェーブモデルで計算された斜面内部の水理量について分析したところ,斜面垂直方向の土壌水分分布が斜面傾斜方向の雨水流動に大きく影響すること,斜面傾斜方向の動水勾配は斜面勾配に概ね等しいことが明らかになった.この結果を踏まえ,鉛直二次元のリチャーズ式において斜面傾斜方向の動水勾配を斜面勾配で近似した,鉛直準二次元飽和不飽和地中流モデルを開発した.このモデルを用いて単一斜面における降雨流出計算をおこない,既存のモデルと流出形態を比較した.開発した準二次元モデルは詳細な雨水流動モデルの結果をよく再現することができた.このことから,流出モデルにおいて土壌水分の垂直分布を考慮することの重要性が明らかになった.また,準二次元モデルの計算時間は,今回おこなった多くの計算条件で詳細なモデルの半分以下に短縮された.