抄録
公共事業において地域の実情や住民の意思を反映するため,計画策定や設計などで参加型審議が行われている.参加型審議を有益に進めるには,地域の実情や関心に応じて参加主体や議題を適切に選択し,参加の場をつくることが重要であるが,そのための社会的手法の研究は十分とは言えない.本研究では,参加型計画開始の前段階として,地域住民の関心を把握し,参加主体の選定や審議課題とプロセスを設定する手法として,米国の紛争解決に用いられている関係者分析(紛争アセスメント)の有効性把握を目的としている.地域の文化や景観に配慮した堤防整備計画における実践例を分析した結果,関係者分析の適用は参加の場づくりの準備だけでなく,中立者ヒアリングにより運営者への信頼感の育成,参加満足感の向上に効果があることが明らかになった.