2012 年 68 巻 4 号 p. 333-343
我が国で発展した応用都市経済モデル(CUEM)は,立地者と地主という主体間の土地市場均衡を扱う構造が一般的である.一方,海外の土地利用・交通相互作用モデルは,さらに開発者という主体を考慮し,土地市場と建物市場を同時に扱う.我が国では土地と建物が個別に取引されていることから,CUEMにおいて土地市場と建物市場を両方明示的にモデル化することでより現実的なシミュレーションが可能になると考えられる.しかしながら,我が国では建物についてのデータ取得が困難であったため,建物市場を考慮したCUEMの実証は少なく,建物市場の考慮がモデル全体に与える影響を調べた研究は皆無である.本研究では,開発者の考慮の有無が分析結果に与える影響を考察することで,開発者を考慮したCUEMの可能性について議論する.