土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
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68 巻 , 4 号
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特集(土木計画における経済均衡モデル研究の最新動向:応用一般均衡モデルと応用都市経済モデル)
  • 小池 淳司, 石倉 智樹, 堤 盛人
    2012 年 68 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     我が国土木計画学の分野では,これまで,多くの経済均衡モデルが開発され,都市や地域といった空間を明示的に扱う点において,経済学の分野から輸入された理論の応用という域を超えた独自の発展を遂げてきた.しかも,交通を始めとする様々な政策評価や事業評価においてこれらのモデルが用いられるようになり,実用面においても近年目覚ましい進展が見られる.本稿では,「土木計画における経済均衡モデル研究の最新動向:応用一般均衡モデルと応用都市経済モデル」の特集にあたって,経済均衡モデルの意義について再確認した上で,各論文の特徴と位置づけについて概説する.
  • 宮城 俊彦
    2012 年 68 巻 4 号 p. 291-304
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,輸送部門を独立した一部門として取り扱う空間応用一般均衡(SCGE)モデルの枠組みと特長を示すとともに,現在施工中の東海環状自動車道に適用し,その経済効果分析を示したものである.多くのSCGEモデルは輸送部門の複雑さを回避するため,一般には氷解モデルを用いている.本研究では氷解モデルの問題点を指摘するとともに,輸送マージンによる方法ではなく,所要時間短縮が家計の拡張された可処分所得変化を通して発現するモデルを提案している.また,道路の改善に伴う地域間の所要時間短縮を経済一般均衡とリンクさせるため,地域間交易係数のシェア・パラメータを空間相互作用モデルで推定する方法を提案し,道路改善が地域間アクセシビリティを変化させるように機能するモデルを提案している.
  • 石倉 智樹, 坂井 啓一
    2012 年 68 巻 4 号 p. 305-315
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     港湾や空港は,国際物流において必要となる基礎的な施設であり,国際物流に関連する多くの産業は,港湾や空港の近隣に立地している.港湾・空港整備政策や貿易政策による地域経済への効果を分析するためには,国際物流関連産業の即地性を考慮する必要がある.本研究は,開放経済において国際物流関連産業の特性を考慮した多地域応用一般均衡モデルの基本形を提案する.さらに,港湾・空港都市と後背地都市の相対的な規模関係の違いによって,貿易需要ショックや国際物流関連産業の技術変化などが地域へもたらす経済的インパクトの特性が変化することを示す.
  • 宮下 光宏, 小池 淳司, 上田 孝行
    2012 年 68 巻 4 号 p. 316-332
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     近年,アジアやわが国において,高速鉄道整備および計画が進められてきている.これらの評価は経済効果に主眼を置くものが多い.一方,高速鉄道整備の環境影響の評価は流動量や交通機関分担の変化に伴うCO2排出量の影響といった交通部門のみに主眼を置くものが多く,高速鉄道整備による経済成長に伴う産業部門からのCO2排出量増加を踏まえた分析事例は少ない.また,こうした評価が可能なSCGEモデルは各国で構築されているものの,国際比較による分析事例はみられない.そこで,本研究では韓国のKTX(韓国高速鉄道整備)と日本のMAGLEV(リニア中央新幹線整備)を対象として,これら双方の観点からの評価が可能なSCGEモデルを用いて,高速鉄道整備による経済効果及びCO2排出量の計測を試み,交通機関や産業構造の観点から国際比較を行う.
  • 堤 盛人, 宮城 卓也, 山崎 清
    2012 年 68 巻 4 号 p. 333-343
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     我が国で発展した応用都市経済モデル(CUEM)は,立地者と地主という主体間の土地市場均衡を扱う構造が一般的である.一方,海外の土地利用・交通相互作用モデルは,さらに開発者という主体を考慮し,土地市場と建物市場を同時に扱う.我が国では土地と建物が個別に取引されていることから,CUEMにおいて土地市場と建物市場を両方明示的にモデル化することでより現実的なシミュレーションが可能になると考えられる.しかしながら,我が国では建物についてのデータ取得が困難であったため,建物市場を考慮したCUEMの実証は少なく,建物市場の考慮がモデル全体に与える影響を調べた研究は皆無である.本研究では,開発者の考慮の有無が分析結果に与える影響を考察することで,開発者を考慮したCUEMの可能性について議論する.
  • 堤 盛人, 山崎 清, 小池 淳司, 瀬谷 創
    2012 年 68 巻 4 号 p. 344-357
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     本稿は,都市経済の実態や都市政策の実証評価を行うための分析ツールとして開発・実用化が進められてきた応用都市経済 (CUE)モデルのより一層の発展を目的として,現時点で残されている課題を整理した上で,今後の展望について議論するものである.はじめに,CUEモデルを取り巻く環境を概観しながらその特徴について述べる.次に,CUEモデルの課題について,理論面と実証面から網羅的に整理する.その上で,整理された課題に関して解決のための展望を述べるとともに,CUEモデルをさらに理論的に発展させる可能性についても議論する.
和文論文
  • 榊原 弘之, 山崎 慎也, 木村 恭平
    2012 年 68 巻 4 号 p. 216-227
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,複数主体が関与して計画を立案,選択する参加型計画システムの構成について検討するとともに,その中で生起するコンフリクトを記述するためのモデルを提案する.まず,参加型計画システムの機能,役割に関する考察をもとに,非協力ゲームモデルによってコンフリクトを記述することの問題点を示す.次に,参加型計画システムが有効に機能するために必要と考えられる構成を示す.その上で,参加型計画システムの中で参加者間で生起するコンフリクトを記述するためのモデルとして,「政策コンフリクトモデル」を提案する.このモデルに基づいてコンフリクトの類型を示すとともに,類型ごとのコンフリクト統治の方策について検討を行う.さらに,政策コンフリクトモデルを生活交通計画に適用し,分析を行う.
  • 鈴木 春菜, 北川 夏樹, 藤井 聡
    2012 年 68 巻 4 号 p. 228-241
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
     交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した.
     その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.
  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 中川 大, 長尾 基哉
    2012 年 68 巻 4 号 p. 242-254
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,日本・フランス・ドイツの全地方都市を対象として,鉄軌道駅の運行頻度ならびに歩行者空間の分布状況と都市構造との関連を実証データにより国際間で比較した.その結果,ドイツにおいて都市全体の人口に占める駅周辺人口の割合が日本やフランスに比べて高い都市が多く存在し,ドイツ,フランス,日本の順で,鉄軌道駅と歩行者空間との近接性が高いことを実証的に明らかにした.さらに,総合的な都市構造指標を主成分分析により導出し,都市構造のコンパクト性を比較した結果,ドイツの都市構造は,日本やフランスの都市に比べてコンパクトであること,また,日本とフランスの都市を比較すると,歩行者空間と鉄軌道駅との近接性の差を考慮した場合,フランスの都市の方がコンパクトであることを定量的に明らかにした.
  • 貝戸 清之, 小林 潔司, 青木 一也, 松岡 弘大
    2012 年 68 巻 4 号 p. 255-271
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
  • 山田 忠史, 中村 昂雅, 横山 大河, 谷口 栄一
    2012 年 68 巻 4 号 p. 272-284
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,均衡制約付き数理計画問題の枠組みで,サプライチェーンネットワーク(SCN)と交通ネットワーク(TN)を統合したスーパーネットワークを対象に,TN上の離散設計変数の値を最適化するモデルを提案する.このモデルの上位レベルは,TN上のリンクの組み合わせ最適化問題に相当する.一方,下位レベルには,サプライチェーンとマルチモーダル交通のスーパーネットワーク均衡モデルを採用し,スーパーネットワーク上の各主体,すなわち,製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者,旅客の行動が記述される.このモデルを用いて,TN上のリンクの新設・改良によるSCNの効率性向上(TNの最適設計),および,リンクの途絶によるSCNの余剰低下(TNの脆弱性評価)について,基礎的検討を行う.
  • 浅田 拓海, 亀山 修一
    2012 年 68 巻 4 号 p. 358-368
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,走行車両から撮影した画像から求まる道路区画線の剥離率DSRを用いて区画線の塗り直しを診断する方法を開発した.札幌市内の国道で撮影した画像を用いて区画線の外観評価試験を実施し,DSRと被験者の外観評価の関係,および被験者が塗り直しを必要と判断するDSR(塗直基準)を明らかにした.また,区画線を外観と夜間視認性の両面から診断するための指標RMCIを考案し,DSRからRMCIを推定する方法を示すとともに,この方法を適用することで塗直区間を大きく低減できることを明らかにした.RMCIでは外観と夜間視認性の比重を調整できるため,道路管理者は,当該路線の夜間交通量や道路照明など,路線の道路・交通特性に応じて維持管理水準を設定することが可能である.
  • 阿部 真育, 吉田 護, 小林 潔司, 紅谷 昇平
    2012 年 68 巻 4 号 p. 369-387
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,口蹄疫の空間伝染過程をマルコフ連鎖過程としてモデル化し,口蹄疫の空間伝染確率を予測するモデル(空間伝染モデルと呼ぶ)を推計するための方法論を提案する.その際,現実に観測される口蹄疫の発症実績データには,1)潜伏期間における感染可能性,2)予防的殺処分等の人為的政策による影響が介在する.その結果,口蹄疫の感染・伝染過程においては,口蹄疫の発症状態のみが観測可能であり,地域における家畜の感染状態を完全には把握できないという問題が発生する.本研究では,このような特性を有する口蹄疫の空間伝染モデルをMCMC (Markov Chain Monte Carlo)法を用いて推計する方法論を提案する.さらに,2010年に発生した宮崎県における口蹄疫災害を対象として,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.
  • 小池 淳司, 平井 健二, 佐藤 啓輔
    2012 年 68 巻 4 号 p. 388-399
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
     道路整備は,人やモノの移動時間を短縮させ,中長期的には,産業の活性化,人口集積など地域の社会・経済構造を変化させる.一方,そのような社会的メリットは,全国一律に享受できるものではなく沿線地域を中心に偏在化し,地域によっては,地元企業の衰退等のデメリットが存在することも知られている.この発展する地域・衰退する地域がどのように分かれるかは,今後の道路整備を考える上で重要な要素であり,客観的な分析が求められる.本研究では,中国地方の過去の高速道路整備が人口構造や産業活動に与えた影響を固定効果モデルにより事後的なパネルデータ分析を行った.その結果,高速道路と産業活動との間には,多くの地域で正の関係性が確認される一方で,人口構造との間には,地方部での負の関係性があることなど空間的な偏在化が示された.
  • 真坂 美江子, 加藤 研二, 近藤 光男, 奥嶋 政嗣
    2012 年 68 巻 4 号 p. 400-411
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,地方都市における健康支援に着目した低炭素交通政策導入の可能性を,特定工業団地従業者に対するアンケートから分析したものである.対象地域で通勤政策として導入を想定しCO2削減量を推定したところ,代表的な低炭素交通政策の一つである奨励金の導入を想定した場合が3%であるのに対し,健康に着目した政策では17~32%と最大約10倍の削減効果が期待できる推計結果が得られた.しかしながら,一般的な健康支援の手法である面接形式では,経済的観点から低炭素通勤政策として適用が困難であり,より安価な健康支援選定の必要性が明らかとなった.さらに,健康に着目した政策は,政策対象者の自動車利用に対する意識が大きく関係しており,政策対象者の自動車利用に対する意識を踏まえた上で政策を決定する必要があることが明らかとなった.
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