本研究では,口蹄疫の空間伝染過程をマルコフ連鎖過程としてモデル化し,口蹄疫の空間伝染確率を予測するモデル(空間伝染モデルと呼ぶ)を推計するための方法論を提案する.その際,現実に観測される口蹄疫の発症実績データには,1)潜伏期間における感染可能性,2)予防的殺処分等の人為的政策による影響が介在する.その結果,口蹄疫の感染・伝染過程においては,口蹄疫の発症状態のみが観測可能であり,地域における家畜の感染状態を完全には把握できないという問題が発生する.本研究では,このような特性を有する口蹄疫の空間伝染モデルをMCMC (Markov Chain Monte Carlo)法を用いて推計する方法論を提案する.さらに,2010年に発生した宮崎県における口蹄疫災害を対象として,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.