2013 年 69 巻 2 号 p. 176-186
近年,地方都市を中心にモビリティの低下による移動制約者が増大している.これは土地利用計画と交通計画の十分な相互関連性が図られずに,市街地が無秩序に拡大した結果と考えられる.このような問題に対応すべく,市街地整備と交通施策が連動した集約型都市構造の考え方が提唱されているが,弱い土地利用規制や既存コミュニティの問題等からその実現化のプロセスは確立されているとは言い難い.
本稿では,集約型都市構造実現に向けた望ましい居住地選択へと誘導するための新しいモビリティの概念を提案するものである.具体的には,モビリティを時間軸で捉え,生涯に亘り享受し得るモビリティの総和をモビリティ残存価値と定義し,その概念構築,定量化及び検証を行なうものである.