抄録
早期避難は津波災害による人的被害を低減するために有効な手段としてあげられている.本研究では避難遅延の要因となる主な心理的作用である認知的不協和および情報待ちの態度を明示的に組み込んだ避難開始の意思決定行動モデルの構築を行い,分析を行った.その結果,まず人々の避難遅延を引き起こす認知的不協和と情報待ちの態度の作用を数理的に説明した.さらに,津波警報の発令確率や避難時の不安感などのパラメータ変化による感度分析を行い,津波避難政策を実行する上で政策実施者が考慮すべき点として,1)住民はあいまいな危険性を認知した場合情報待ちをしてしまう,2)津波のような発生頻度の低い災害では認知的不協和により非合理な待機をしてしまう住民が多くなる,3)避難路整備,防災教育実施上の留意点などを得た.