2013 年 69 巻 5 号 p. I_621-I_628
路面電車の軌道緑化は,都市景観の創出,ヒートアイランドの緩和,騒音の抑制など様々な効果をもたらしている.本研究では,2007年度から本格的に軌道緑化がなされ,2012年度末には道路延長にして8.9kmの併用軌道区間全ての緑化が完成するという,日本で最も整備が進んでいる鹿児島市の路面電車沿線住民を対象として,軌道緑化に対する住民意識に関するアンケート調査を実施した(有効回答数327世帯).その結果,軌道緑化の整備が進むにつれ市民の評価意識は高まり,公的事業としての軌道緑化事業の実施推進や税金利用に対する意識の向上を促していることがわかった.また,アンケートによる支払意思額にもとづいて軌道緑化の環境価値を推計したところ,年間数億円程度の便益がもたらされている可能性を示した.