抄録
地方都市では地域公共交通の路線維持が困難になっている.また,運行事業者に対する自治体からの補助額も年々増加しており,自治体財政の点からも大きな問題となっている.
本研究では,これまでの欠損補助制に対して,事業者と自治体との両者に対して費用の削減や需要の獲得の動機を与えるインセンティブ補助制度の地域公共交通への提供可能性について検討する.需要固定型であった既存モデルに対して,ここでは運行頻度を未知変数の一つとし,需要変動を内生化した,より一般的な地域公共交通システムに対するインセンティブ補助モデルを提案する.このモデルを,地域公共交通サービスの維持が喫緊の問題となっている熊本県荒尾市の路線バス網に適用し,決定変数に対する権限の付与の違いによる解の特性や適切な政策を明確にしていくことを目的とする.