抄録
東日本大震災による経済被害は甚大かつ長期に渡ると考えられている.この未曾有の災害による経済影響を評価するために,産官学の各機関において被害試算が行われているが,その多くはストックの観点から被害を捉えて速報的に算出したものである.しかしながら,将来の災害に対する減災対策の便益評価や,資金準備の適性を図るためには,災害直後から復旧達成までの全過程を通じて生じる経済被害の総額を求める必要がある.そこで本研究では,産業部門を対象として,フローの観点から災害による被害を整合的に評価する方法を提案し,東日本大震災における被災地域を対象とした被害推計への適用を試みた.推計結果としては,震災後1年間で東北・関東に立地する9県で震害により総額3兆4180億円の経済被害額が生じることが示唆された.