抄録
本研究では,ミクロな歩行者挙動モデルのパラメータ推定手法としての一般状態空間モデルの適用可能性を検討する.この手法は,最尤推定に代表される従来手法にはない利点を有する.それは,逐次的に得られる挙動データに基づいて逐次的にパラメータ推定が可能であること,結果としてパラメータの時系列変化を捉えられること,取得されるデータの計測誤差を明示的にモデル化できることである.まず,一般状態空間モデルにおけるパラメータ推定を定式化する.次に,実データにより離散選択型の歩行者挙動モデルのパラメータ推定を行う.推定結果について,初期分布をはじめとする推定時の設定や,実際の歩行空間の状況との比較から考察を行い,この推定手法の有用性を実証的に示した.