抄録
鉄道事業者は利用者の要望を汲み取るため,顧客満足度調査(CS調査)を実施してきた.従来のCS調査では,利用の蓄積等から形成される鉄道への印象,利用年数,サービスへの満足度等の個人の感覚的要素が満足度に与える影響について考慮されているとは言えず,サービスに対する現在の満足度のみに着目している.本研究ではこれらの要素が愛着に影響を与えると考え,鉄道利用者に対する意識調査を全2回実施した.意識構造分析の結果,鉄道施設への満足度が愛着に影響を及ぼして,さらにはそれが継続利用の促進に影響を及ぼすことが分かった.また同時に鉄道利用年数と,サービスに印象を持った経験も愛着に影響することが示された.このことから,鉄道事業者は利用者の愛着についても考慮する必要性があるといえる.