抄録
都市内農地をめぐり,都市的土地利用への転換を図るべきとの意見と,多面的機能を維持するため農地として保全すべきとの意見が対立している.この議論に対し,本研究では農地政策が都市内農地の宅地転用と生物生息に与えた影響を実証的に明らかにする.具体的には,1991年の農地政策の見直しに着目し,以下の二つの分析を行なう.第一に,複数の農地政策シナリオを想定し,それぞれのシナリオ下での都市内農地の残存確率を推計する.シナリオ間の比較より,農地政策の見直しが宅地転用に与えた影響を推計する.第二に,土地利用と環境指標生物の生息確率の関係を推計し,第一の分析結果を組み合わせることで,農地政策の見直しが環境指標生物の生息確率に与えた影響を推計する.