抄録
稀少である災害下においてはリスクを共有する周辺他者の行動に同調した行動がとられやすく,また地区内の他者との関わりを想定した減災施策も近年注目されている.そこで,本研究では,避難開始選択における他者の行動選択の影響を評価することを目的として,個人の意思決定モデルを構築した.提案モデルは災害時に現れる不平等回避選好や時空間上の制約を反映することで,二者の関係性と地区内の人的ネットワークの影響を同時に評価することが可能である.行動仮説の実証のため,提案モデルに適用可能な疑似最尤法を導入した上で,実際の豪雨災害時の避難行動データを用いたモデル分析を行った.実証分析により,避難開始選択における他者の影響考慮の妥当性を示し,また,その空間的な偏在が生じていることを明らかにした.