抄録
郵送型社会調査の回収率の低下の問題は広く知られているが,災害復興時の調査未回答者は,特に問題を抱えた世帯である可能性があり,その精査は重要である.本研究は2016年熊本地震の被災地益城町の仮設住宅居住者に対して,同時期に実施された郵送調査と全世帯聞き取り調査を比較することで,郵送調査未回答世帯の傾向を明らかにする.まず,現役世帯は成人女性の比率が高いほど郵送回答しやすく,二世代同居世帯は就業人数が少なく世帯の成人平均年齢が高いほど郵送回答しやすい傾向にあることを示した.また,集団意思決定モデルによる分析より,若年層または80代以上,男性の世帯構成員が多い場合に調査へ回答しにくい傾向が明らかとなった.さらに,個人・世帯の属性では説明できない無回答の要因の一部を聞き取り調査の自由回答から明らかにした.