2019 年 75 巻 3 号 p. 158-171
老朽化した公共施設の健全度を判断する際に,根拠となる劣化の現象に対する判断過程を分類木によって整理することは健全度の判断だけでなく,住民や行政など関係者間での補修や建替などの合意形成を円滑に進める上でも有用である.しかし,分類木を作成するための従来手法では,「健全でない」施設を,分類木上「健全である」と判断してしまうような重大な誤判別が明示的に取り扱われて来なかった.本研究では,分類木を作成する際の学習段階で生じる重大な誤判別を避けつつ,分類の精度が保たれるような重み付き最適分類木の作成手法を提案する.さらに愛媛県松山市における公共施設32棟について劣化調査を実施し,提案手法を適用した.その結果,提案手法の有用性を確認するとともに,重大な誤判別を避けるために考慮すべき要因を明らかにした.