空間的応用一般均衡(SCGE)モデルによる交通整備の便益評価に係る研究が,これまで精力的に行われてきた.しかしながら,それらの研究では交通サービスを生産する運輸企業が明示的に表されていないものが多く,交通整備による交通所要時間短縮は直接交通サービス需要者に効果をもたらすと想定されていた.ところが,そのような想定では,1)運輸企業の生産効率性向上と付加価値変化が計測できない,2)財価格の変化に比例して交通費用が変化するという不自然な結果を生む,3)財価格や賃金変化等の波及効果が運輸企業の生産に影響しないという問題がある.そこで本研究では,交通生産を内生化したSCGEモデルを開発し,さらに波及効果の確認のために便益帰着構成表を作成して,わが国の費用便益分析マニュアルの便益評価手法との整合性を示した.