2020 年 75 巻 6 号 p. I_317-I_327
少子高齢化社会における持続可能な都市経営の観点から,多くの地方都市で中心市街地活性化に関わる各種の施策が推進されている.本研究は,中心市街地の多様な施設の立地状況や街路ネットワーク構造,交通利便性といった空間特性と歩行者通行量の関連性を分析する.街路沿道に立地する施設が,当該街路のみならず周辺の街路の歩行者数とも関連を持つ可能性を明示的に考慮した点が本研究の特徴である.分析の結果,施設の充実した街路では,その施設の種類に関わらず歩行者が多いこと,また,周辺街路にも商業施設が多いと歩行者が多い一方で,隣接街路に文化施設が存在すると歩行者が少ないことが明らかとなり,商業機能の連なりの形成や文化施設の利用者動線を意識した面的整備等の施策が中心市街地の賑わい創出に対して有用である可能性が示された.