1989 年 27 巻 2 号 p. 1-9
本研究は、精神遅滞児のリズムの発達研究の一つとして、テンポへの同期をとりあげた。動作数で測定したパーソナル・テンポより速いテンポと遅いテンポの2種のテンポに分け、手拍子と歩行で同期させる課題を用いた。対象児はMAで統制した3〜6歳の精神遅滞児と対照群としての健常児の計88人である。その結果、それぞれ安定したパーソナル・テンポが測定でき、同期の成績もMAの増加にともなって向上することがわかった。特に、MA3・4歳間、5・6歳間で顕著な向上がみられた。健常児では、CA・MAの増加にともなって同期の成績が向上したが、精神遅滞児のCAでみたときは一定の傾向はみられず、むしろMAおよびIQとの関連が強かった。また、手拍子と歩行という反応モダリティによる違いは、手拍子のほうが歩行よりもよい成績を示した。手拍子ではMA6歳で2種のテンポに同期できるようになった。一方、歩行では7歳以降になると考えられた。