2020 年 76 巻 4 号 p. 282-298
都市への人口集積現象のメカニズムは新経済地理学モデルの理論分析を通じて研究されており,分岐を通じて集積パターンが形成されることが解明されている.しかし,多くの研究は2立地点空間や競技場経済のような対称性の高い空間を仮定しており,現実空間がもつ地理的優位性を捨象している.本研究では,境界がある線分上に等間隔に都市が分布する線分都市経済に着目し,単一の巨大都市型の集積が,衛星都市を含む都市群の集積に変化するメカニズムを,分岐解析により明らかにする.また,解析例としてForslid & Ottaviano1)のモデルをとりあげる.その結果,工業財への支出割合が大きいほど,あるいは,財の代替弾力性が小さくなるほど,衛星都市が中心都市から離れた箇所で発現することが明らかになった.