2021 年 76 巻 5 号 p. I_165-I_172
2011年の東日本大震災は主に東北地域において甚大な被害をもたらした.政府および地方自治体は,これまで様々な復旧・復興事業を行ってきたが,それらの事業は被災地域にどれほどの効果をもたらしたであろうか.本研究では,著者らが開発した生活圏間産業連関表を用いて復興交付金等による復旧・復興事業費の被災地及び他地域への経済波及効果を分析した.本研究の分析期間は,2011年度から2017年度であるが,2017年度の被災地における生産誘発額は,被災地計で2.7兆円,その他全国で1.3兆円であり,波及効果の約3分の1がその他全国への漏出したことが明らかになった.また,復旧・復興事業のフロー効果による域内総生産への寄与を分析し,復旧・復興投資の寄与が大きい地域とそうでない地域が存在することが明らかになった.