2021 年 76 巻 5 号 p. I_173-I_183
平時から防災意識を醸成するためや未災地に災害の教訓を伝えるために,災害時に被災者が抱えたジレンマを共有することが有効である.クロスロードゲームは,災害時に個人が経験したジレンマを追体験するだけでなく,そのジレンマを共有し継承していく機能もある.本研究の目的は,防災学習教材である「クロスロード」を通じて,被災者が体験したジレンマの構造とその共有過程を明らかにすることである.具体的には,熊本地震とその復興過程におけるジレンマを問題にしたクロスロード熊本編の制作過程及びプレイした結果を分析し,ジレンマの構造とその共有過程について考察した.研究の成果として,ジレンマは「選択のジレンマ」「立場によるジレンマ」「潜在的ジレンマ」の3つに大別され,ジレンマの共有にはそれぞれの特徴があることが分かった.