2021 年 76 巻 5 号 p. I_397-I_407
本稿は,まちづくり治水計画の実装化に向けた知見を得ることを目指し,川沿いの街路や建物群と一体的に洪水防御をおこなうことで治水と風景を両立した魅力的な空間を生み出しているヴュルツブルクの治水整備を対象に,関係者へのヒアリングや現地調査,文献調査により,1945 年から現在に至る治水整備の内容を明らかにし,その特徴について考察したものである.その結果,洪水防御と魅力的なかわまち空間創出の両立の大きな実現要因として,1) 後背地の特性を活かした堤防法線,2) 川とまちをつなぐ可搬式・可動式堤防,3) 水辺の賑わいを創出する建物連担型の堤防壁,4) 風景の質を高める堤防デザイン,5) 治水整備と連動した都市空間の再編,6) 河川管理者と基礎自治体の連携・協働体制の 6 点を指摘した.