2021 年 76 巻 5 号 p. I_417-I_423
現在の避難計画は各市町村が作成し,住民は自身が居住する市町村の避難所を利用することが前提だが,想定外の豪雨による水害発生時,河川と市町村境に挟まれた地域では,氾濫しそうな河川を横断しなければ自身の市町村の避難所に行けない避難困難地区も存在する.本研究は,西日本豪雨の被災地を対象に地図分析から避難困難地区の抽出を行い,中国地方および兵庫県の26市町33地区が該当することを明らかにした.このうち11地区は隣接する市町村の避難所が利用できれば河川を横断しなくとも避難が可能となる地区であったが,自治体へのアンケート調査では,実際に越境避難を促しているのは僅か3地区に留まったほか,避難困難地区と認知していながら特に対策を講じていない場所も複数存在した.