2021 年 76 巻 5 号 p. I_689-I_698
本研究では東日本大震災の被災地における被災状況および自動車の保有状況を比較し,宮城県・岩手県沿岸の被災地で,人口当たりの自家用車保有率が被災の規模に比例し増加する傾向があること,この地域はもともと軽自動車の割合が高い地域であったが,震災の後に軽自動車へのシフトが一段と進んだことを明らかにした.また,同地域の高速道路の震災後の復旧・整備状況と在来線鉄道路線のそれを比較し,さらに市町村道密度の変化を比較することで,同地域では震災復興に伴い道路整備が著しく進み,被災の規模に比例し道路密度が増加する傾向があることを示した.これらの結果から,東日本大震災からの復興過程で交通インフラが変化する中,宮城県と岩手県の沿岸の被災地では地域交通体系における自家用車への依存の度合いが高まっていることが示唆される.