2021 年 77 巻 4 号 p. 389-399
社会基盤施設の長期維持補修計画の策定には,ライフサイクル費用最小化基準が採用されている.しかしながら,維持管理主体には財政制約がある.そのため補修工事費用の支出に占める割合が大きくなると,補修工事費用が他用途への支出を圧迫する費用や追加的財政収入を得るために生じる死荷重といった公的資金の限界費用(MCF)の考慮が欠かせない.本研究は,MCFを考慮したうえで社会厚生の最大化に基づいた維持補修計画の決定方法を定式化する.そのうえでライフサイクル費用最小化による補修施策がMCFを考慮した社会厚生の最大化施策からどのように乖離するかを理論および定量的に示す.