土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
77 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 中村 嘉明, 溝上 章志
    2021 年 77 巻 4 号 p. 291-300
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     我が国における乗合バスの乗務員は,その労働条件の厳しさ,収入のレベルなどの問題もあり,若い人の就業人口は少ない.また,高速バス等で発生した過重労働による交通事故などを受け,厳格な運行管理が徹底されている.そのため,バス乗務員の勤務スケジュール作成においては,限られた乗務員のなか,様々な条件をクリアできる勤務スケジュールの作成が必要となり,勤務スケジュール作成者の大きな負荷となっている.本研究では,バス乗務員の勤務スケジュール作成プロセスにバス事業者特有の制約を加えることでパイロット勤務スケジューリング問題を適用し,その有用性を示すとともに,システム化と課題の検討を行う.

  • 河野 達仁, 多々納 裕一, 牛木 賢司, 中園 大介, 杉澤 文仁
    2021 年 77 巻 4 号 p. 301-315
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     甚大な津波被害が予測されている南海トラフ沿いの沿岸では,立地している企業数の減少が見られる.防潮堤整備は,浸水リスクを減少させ,立地行動に影響する.そのため,防潮堤整備の地域経済への影響把握や防潮堤整備効果計測のためには,産業立地への浸水リスクの影響を捉える必要がある.津波浸水リスクは,海岸からの距離や地形条件によって空間的に異なる.また,産業別に地域固有の立地要因が存在し,浸水リスクに対する反応も異なりうる.そこで,本研究では,浸水リスク情報公表の立地への影響を捉えるために,固定効果モデルにより浸水想定の公表前後の産業別企業数変化を分析した.その結果,製造業や卸売業などの需要地が広範囲に及ぶ産業では負の影響が出る一方で,教育等の近隣に需要地がある産業にはほぼ影響がないことが確認された.

  • 中川 大, 鈴木 克法, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2021 年 77 巻 4 号 p. 316-329
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     毎時同時刻に列車が発車する「パターンダイヤ」は,欧州等では多くの路線で取り入れられ,それに伴って利用者数も増加していると報告されている.一方,わが国においてはパターンダイヤの実施状況に関して分析した例は少なく,パターンダイヤと利用者数の変化との関係について分析した例もみられない.そこで本研究では,パターンダイヤの設定状況を表す「パターン率」を定義し,全国の地方鉄道路線におけるパターンダイヤの実施状況とその変化を2時点において明らかにした.また,各路線のパターン率と輸送密度の増加比率のデータを用いてその関連性を分析した.それらの結果,パターン率は事業者分類によって大きく異なることや,パターンダイヤを継続的に採用してきた路線は,採用していない路線より輸送密度の増加率が高いことなどを明らかにした.

  • 酒井 高良, 赤松 隆, 佐津川 功季
    2021 年 77 巻 4 号 p. 330-345
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,タンデムボトルネック・ネットワークにおいて,スケジュール遅れ時間価値が異なる利用者を考慮した動的システム最適(DSO)配分と動的利用者均衡(DUE)配分の解析的解法,および両者の対応関係を解明する.具体的には,まず,DSO配分の解析的解法を最適輸送理論と動的計画法の枠組みを活用して構築する.続いて,DSO配分とDUE配分の問題構造上の類似点に着目し,スケジュールコスト関数が緩い仮定を満たす場合には,前者のボトルネック容量制約条件に対するラグランジュ乗数が後者のボトルネック待ち行列遅れコストに一致することを示す.さらに,この事実に基づき,DUE配分の解がDSO解析解を活用して得られることを明らかにする.最後に解析解の比較を通して,両者の類似点および相違点を明らかにする.

  • 管野 貴文, 安藤 慎悟, 谷口 守
    2021 年 77 巻 4 号 p. 346-354
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     国土形成計画をはじめとする様々な広域的な計画や業務において,地方ブロックは種々の意見衝突を経て上位計画として付与されるものであった.一方,地方における活動の担い手が減少する中では,各個人と地方との実質的なつながり(=訪問を通じた地域貢献)の中で地方ブロックをボトムアップの視点から再構成していくことが不可決である.本研究では,全国を対象とした関係人口の実態調査をもとに,主成分分析を通じて地方ブロックの逆推定を試みた.分析の結果,関係人口から国土の基本構造を規定する11の主成分軸が抽出された.あわせて,関係性という点で複数の地方ブロックに関与する地域や,むしろ相互に関係性を有しない地方ブロックの存在などが定量的に示され,今後の政策実践の上での新たな指針が得られた.

  • 阿部 貴弘
    2021 年 77 巻 4 号 p. 355-374
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,米国ハワイ州において保全されてきた日系人に関わる歴史的環境を対象に,歴史的価値を評価する際の評価手法を明らかにすることを目的とする.本研究では,まず,米国ハワイ州において,国および州の文化財登録制度に登録されている日系人に関わる歴史的環境を抽出し,それらの価値評価内容の詳細な分析に基づき,評価の観点および評価軸を類型化した.さらに,各類型の相互関係の分析に基づき,評価手法の特徴を明らかにした.これらの成果は,日系人はもとより,他のエスニック・グループに関わる歴史的環境保全の推進に資する有益な研究成果であると考える.

  • 田村 将太, 田中 貴宏
    2021 年 77 巻 4 号 p. 375-388
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,広島県広島市を対象に土砂災害リスク軽減の観点から将来の都市構造のシナリオ(減災型シナリオ)を作成し,そのシナリオを6つの評価分野から18の指標を用いて多面的に評価した.その結果,(1) 2015年に比べ,2040年の土砂災害警戒区域内人口は減少しているものの,2040年人口の約17%が居住しており,将来的にも少なくない居住が見込まれること(2) BAUに比べて,減災型シナリオはすべての評価指標で評価が高く,集約化の効果は一定程度みられること(3) 土砂災害警戒区域内で耐用年数を迎える住宅の建替更新を規制し,これらの立地を居住誘導区域に誘導することができれば,一定程度,持続可能な都市構造を実現することも可能と考えられること等が明らかとなった.

  • 河野 達仁, 嶌 万希音, 水谷 大二郎
    2021 年 77 巻 4 号 p. 389-399
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     社会基盤施設の長期維持補修計画の策定には,ライフサイクル費用最小化基準が採用されている.しかしながら,維持管理主体には財政制約がある.そのため補修工事費用の支出に占める割合が大きくなると,補修工事費用が他用途への支出を圧迫する費用や追加的財政収入を得るために生じる死荷重といった公的資金の限界費用(MCF)の考慮が欠かせない.本研究は,MCFを考慮したうえで社会厚生の最大化に基づいた維持補修計画の決定方法を定式化する.そのうえでライフサイクル費用最小化による補修施策がMCFを考慮した社会厚生の最大化施策からどのように乖離するかを理論および定量的に示す.

  • 児島 利治, Chantsal NARANTSETSEG , 大橋 慶介
    2021 年 77 巻 4 号 p. 400-411
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     深層学習による衛星画像や既存地図からの土地利用データ作成については,様々な研究例はあるものの実用化には達していない.本研究では,適用例の少ない地形図からの土地利用データ作成について,実用レベルと言われる総合精度(OA; Overall Accuracy)で85%を達成する手法の提案を行っている.国土数値情報土地利用細分メッシュデータを学習データとし,CNNによる分類を適用し,1) 学習回数が5回程度で良い事,2) 各クラスの学習サンプル数は10,000以上が望ましい事を示している.また,毎回の学習結果が少しずつ異なることを利用し,複数の学習結果を統合する手法を開発し,OAで90%程度の実用レベルの分類精度を定常的に示すことができる土地利用分類手法を提案した.

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