2022 年 78 巻 2 号 p. 45-57
「令和2年7月豪雨」では,熊本県南を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害,土砂災害が発生し,死者・行方不明者86人の甚大な災害となった.本研究では,被害の大きかった熊本県の人吉市,球磨村,八代市坂本町の浸水被害を受けた住民を対象に,時間の経過とともに河川の状況や災害発生への意識,およびそれに伴って変化する避難意識についてアンケート調査を行った.そして,そのアンケート結果を用いて,豪雨の進行とともに変化する状況認識に基づく避難行動意思決定モデルを構築した.アンケート結果の分析や避難意識モデルから,水平避難を促す要因は,ハザードマップの確認や避難場所の確認といった災害への備えや避難勧告や避難指示といった避難情報より,避難の呼びかけや河川氾濫など状況認識を促進させる刺激の方が有意であることが分かった.