2023 年 78 巻 5 号 p. I_777-I_788
我が国の自転車通行空間では,整備過渡期であるがゆえか,これまでの慣習に従った歩道通行を維持する自転車利用者も多い.本研究ではSocial Incentivesという概念を援用し,規範となる情報を利用者に提示することによる自転車通行空間の利用率向上の効果を検討することを目的としている.WEB調査会社に登録するモニターを対象に制御群,SI情報提示群,罰則情報提示群に対して整備内容及び車線数の異なる6つの道路空間を提示し,当該空間における通行位置の意向を把握した.その結果,SI情報提示は,個人属性や居住地域の自転車通行空間の実態,道路構造といった共変量の影響を踏まえても車道通行意向を高める可能性があるものの,その結果は提示する他者の車道通行率の高さに比例するとまではいえないことを示した.