2023 年 79 巻 1 号 論文ID: 22-00041
持続可能なインフラ開発のためには,中小企業を含めたあらゆる企業が安定的に経営できる環境が不可欠である.しかし我が国では長年,企業間下請関係における収奪問題が中小企業経営の大きな障害となっている事が指摘されておりその解決が問われてきた.本研究では,これまで行われる事が無かった定量分析で用いられる下請定義を拡張した分析と,例外的扱いとされる事が多かった建設業を対象に含めた分析を行った.その結果,企業間取引にて収奪問題が起きやすい可能性があり,また,製造業では1980年頃,サービス業では1990年頃から収奪問題が悪化している事が間接的に示唆された.さらに建設業では少なくとも1992年以降から長期的に収奪問題が悪化しており,とりわけ下請が元請の景気変動の緩衝材としての役割を果たしている可能性が示された.