2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17004
δ-SPH法を用いた流体解析では相互に作用し合う粒子群(近傍粒子)を規定する影響域の大きさの設定が重要である.影響域を大きくすなわち近傍粒子数を多くとるよう調節すれば良好な計算精度が得られるが,反面計算コストが膨大となる.このことから,δ-SPH法では計算精度とコストのバランスを考慮した影響域の経験的なチューニングが必要となっていた.本研究では,影響域を小さく設定した場合においても高精度な計算が可能なモデル,δ-SPH-CG法を開発した.δ-SPH-CG法では,既往モデルの圧力勾配項の離散化に着目し,修正行列を導入した改良型圧力勾配モデルを採用することで狭影響域下での精度向上を実現する.手法の検証として波浪伝播に関する計算を行い,提案モデルでは狭影響域設定下においても既往モデルの広領域設定と同等の計算精度が得られることを示した.