2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17083
温暖化に伴う海面上昇による汀線後退量の算定には,将来の平衡断面の形状が極めて重要である.平衡断面には前浜勾配や底質粒径が影響を及ぼし,将来におけるこれらの値の予測が不可欠である.2014年~2020年に波崎海岸で高頻度観測された地盤高さと底質粒径のデータ,室内実験結果を用いて,コンストラクタル則による前浜勾配と底質粒径の動的関係の解析解を再検討した.
実験による得たup rush時の流速やdown rush時の水位に関連する係数を考慮した底質粒径と前浜勾配の解析解において,安息角の影響が顕著となった.平衡断面と仮定した波崎海岸の岸沖断面地形に対して前浜勾配を考慮した既存の式を適用し,凹凸が小さい断面地形への妥当性を確認した.将来の遡上帯の前浜勾配と底質粒径の動的関係を考慮することで汀線後退量の算定が可能になることが示唆された.