2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17143
本研究では,閉鎖性水域である東京湾を対象に,硫化物・鉄・マンガン循環に着目して流域河川及び湾内における現地観測及び3次元浮遊系−底生系結合モデルによる数値解析を行った.河川の負荷量調査により,荒川,多摩川におけるFe,Mnの形態別にL-Q式を作成すると共に,それぞれの河川の負荷量を算出した.また,湾内における水中・堆積物分析の結果からは,H2Sが存在する底層無酸素下において,P-Feの増加が確認され,H2SとFe2+との反応による硫化鉄の生成が原因と示唆された.一方でD-MnはORP<-200mVの無酸素下において底泥からの溶出により高濃度化していたことが確認された.3次元浮遊系−底生系結合モデルの解析では,堆積物中のH2Sの過大評価や水中のD-Mnの過小評価といった課題はあるものの,水中のDO,D-Fe,H2S,堆積物中のD-Fe,D-Mnの鉛直分布を概ね再現することができた.