2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17150
広島湾奥部における養殖マガキは,近年斃死率が高い状態が続いている.カキの斃死要因としては,高水温・低塩分・餌料不足・競合生物・底泥による酸素消費や硫化水素の発生など様々な要因が検討されているが未だ明確な斃死要因は分かっていない.本研究では,現地実験として5年間継続して深さ方向のカキ斃死率を計測するとともに,1988年から2020年までの広島湾における水温・塩分データ,カキの斃死率等のデータを用いてカキの斃死要因を検討した.
その結果,水深10m付近では溶存酸素濃度の低下,水深0.5m,5mでは高水温による産卵回数の増加に伴う養殖マガキの体力低下が主な斃死要因であることを明らかにした.また,2000年以降は表層積算水温が高い年には斃死率が高くなることがわかった.