2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17151
緩傾斜石積み護岸に日陰が少なく,生物の分布範囲が小さいという課題に対処する方法を見出すために,夏期に吉野川汽水域の緩傾斜護岸において,日射と潮間帯生物の分布の関係について調査を行った.調査地の南向き護岸の日射量は北向き護岸の約1.4倍で,南向き護岸は日射の影響を強く受け,乾燥しやすく,表面温度が高くなる環境であることがわかった.それに応じて,護岸表面の生物は北向きに比べて南向きでは種数が少なく被度も低かった.一方,護岸隙間では湿潤環境が維持されるため,南向きの護岸であっても表面よりも生物の種数が多く被度も高い上,海藻(イソダンツウ)の生育も可能となっていた.緩傾斜護岸の日射の影響を低減させ,生物多様性を高めるためには,湿潤環境が保持できる隙間構造を適切に設けることが重要であることが示された.