2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17165
既存の高潮浸水想定においては,最大風速半径(Rw)やスケーリングパラメータ(SP)を決定する半径比(Rp/Rw)は,歴史的顕著な事例の値をそのまま運用するなどの課題が挙げられる.本研究では,日本に上陸した台風49事例を対象に再現計算結果を詳細に解析することで,Rwおよび最大気圧半径(Rp)に関する時空間的な変化傾向を調査した.解析の結果,Rpは時間に依らず一定の値をとり続ける傾向にあり,RwはRpの値に比べ変動が大きい傾向がみられた.また半径比はピーク時には1付近,上陸時には0.4-1.0の範囲に幅広く分布しており,台風のライフタイムに応じて値が変動することが明らかとなった.Rwのばらつき要因の解析では,最大風速出現位置が台風の構造崩壊に伴い,台風中心周辺から遠い場所に現れるようになることが明らかとなり,空間的なばらつきが起因しているといえる.