2023 年 79 巻 20 号 論文ID: 23-20050
本研究では電力消費量が住民や企業の活動度を強く反映することに着目し,スマ―トメーターデータを用いた水害による社会経済活動への影響分析を試みた.具体的には,災害がない場合の電力消費を予測するモデルを構築し,観測値との差分から水害による電力消費低下量を推計するアプローチを行った.2019年の水害によって影響を受けた地域に本分析アプローチを適用した結果,電力消費量の落ち込みは発災から時間が経るにつれて回復傾向を示し,浸水が発生していないと推定された周辺地域にも間接的影響が波及していることが確認された.本結果は,スマートメーターの利点である比較的小さな時空間スケールで取得された電力消費量データの利用によって,時空間的に精緻かつリアルタイムでの水害被害の把握につながる可能性を示唆している.