2023 年 79 巻 26 号 論文ID: 23-26014
気候変動による悪影響が進行するなか,現世代の人間活動が将来の世代に及ぼす悪影響の正義論が注目されている.本研究では,将来世代が経験する超極暑日の情報を一般市民960名に提示し,ウェブアンケートによりその反応を調べた.情報提供によって対策行動意図が高まる一方で、約6割の人々は,将来世代が超極暑日を400回経験するという状況を想像できていなかった.他方,情報を信じない回答者群のように既に形成されている態度の方が大きく影響する可能性も見出された.多変量解析を用いて回答者の属性と27の対策への態度を分析した結果,情報を信じない人と将来を無視する人が対策に否定的であった.将来世代が受ける悪影響を示す情報を人々に提示しても,既存の取組実践者の行動意図を強化するにとどまる可能性があり,さらなる研究が求められる.