2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27010
本研究は,日本沿岸域を対象に 2100年までに予測される海面上昇に伴う潜在的浸水被害額に関して地価を用いて推計し,さらに既存の被害額推計手法と比較を行った.浸水被害額の推計に用いる地価には,公示地価(住宅地),田,畑,用材林の価格をそれぞれ使用し,平均化及び補間処理を行うことで市区町村ごとのデータへと整理した.浸水面積と被害額は,SSP1-2.6,SSP2-4.5,SSP5-8.5の3つの代表濃度経路・社会経済シナリオに基づきでそれぞれ算出した.その結果,全国での潜在的浸水面積は2100年で2,542~2,707km2(SSP1-2.6~SSP5-8.5)になった.また,被害額は,2050年で158~200兆円(SSP1-2.6~SSP5-8.5),2100年で185~428兆円(SSP1-2.6~SSP5-8.5)となった.