2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27012
対流圏オゾンは植物のCO2吸収量に悪影響を与えることで知られている.対流圏オゾン濃度は主としてNOxなどの前駆物質の濃度に依存するが,温室効果ガスの排出削減はオゾン濃度を減少させると期待される.一方,対流圏オゾンが植生のCO2吸収量へ及ぼす影響の気候変動緩和策からの解釈は行われていない.そこで本研究は緩和を行わないシナリオと1.5度目標相当の緩和シナリオ下で,植生の純生物相生産(NBP)に対するオゾン影響を定量化した.結果,NBPに対するオゾン影響は緩和策により低減した.全植生を対象とした低減効果は全世界での植林等によるCO2削減量の11-44%に相当し,十分大きいと考えられた.また,CO2削減量として計上できる植林等によるCO2吸収量は,影響の低減に伴い増加したがその変動量は小さかった.